スエードは汚れると元に戻らない
スエードのバッグが汚れたので、バッグクリーニング専門店に出してもさほど綺麗になって戻ってきません。レザーは、汚れを洗浄しても跡が残ります。スムースレザーなら、リカラーして汚れ跡を修正できますが、スエード・ヌバック・ベロアを、リカラーする技術がないのです。
後染色が難しいスエード
レザーは動物の皮を使用しています。リカラーするのに顔料ではなく染料を使います。革の場所によって微妙に皮質が違ってくるので、箇所によって染料の染み込み方が違ってくるので、フラットにならないことが多いのです。
エルメス スエード長財布 ドゴンGM エヴァー・ソフト
ところどころにシミや手あかがついている長財布です。洗浄しても跡が残りますので、リカラーで修正します。スエードの染色も、汚れのあるところと、ないところでは色の染まり方が違ってくるので、まだらになってしまうことがあり、それをフラットに染め上げるのが、スエード染色の高い技術です。バッグ専門クリーニング店といえども、これができるところはほとんどありません。
少しづつ染色をして、更に修正を加えていくなど、時間を掛けて完成度を高めていきました。出来上がりです。
ドルチェ&ガッバーナ スエード バッグ
中央部分に汚れがベッタリとついたスエードバッグです。バッグクリーニングの洗浄で汚れを落としますが、すっかりキレイにはなりません。そこで再染色(リカラー)をして修復します。染色する面積が大きいので、はじめに全体を染色し、細かく修正するという方法で、修復いたしました。
スエードは、汚れが吸収しやすく、雨ジミや飲み物をこぼしたりして、シミになってしまうと、バッグ専門店に持って行っても十分な仕上がりにはなりません。洗浄だけでなくスエードのリカラーができて、初めてスエードバッグのクリーニングと言えるのです。
スエードバッグのクリーニングと補修
ティファニー リバーシブルトートバッグ
このバッグは、「ティファニーブルー」と呼ばれている色のバッグです。微妙な青緑色の染料を作り出すのも、なかなか容易ではありません。今回は部分的な色補正ですから、自然な感じを出すために、染め過ぎないように、少しづつ吹き付けていきます。
少裏側が銀面のリバーシブルになっていて、裏返しても使えるトートバッグですが、表側はスエード素材で各所にシミ、汚れがありました。それらのついていた汚れはほぼキレイになりました。
バッグの底の角はぶつかったりするので、最もスレ、汚れが多く、必ずメンテナンスが必要となります。
メンテナンスすることで底かどのひどかった汚れも改善出来ました。汚れを完全に隠すためには濃い色に染め替えすることが考えられますが、このティファニー・ブルーの色を変えずに作業することで、ここまでがベストとなります。
底の汚れもほぼ除去出来ました。
スエードのレザーは毛羽立っているので、汚れがつきやすい素材です。使用した後はまめにブラッシングしていると、汚れが沈着しにくくなるので、おすすめしたいお手入れ方法です。バッグの底も忘れずに。