高級絨毯の魅力
ペルシャ絨毯と原産地のメンテナンス


ウールやシルクのペルシャ絨毯、ギャッベ・キリムなどのイスラム諸国の絨毯、アフガニスタンの手織り絨毯、中国段通、アキスミンスターと呼ばれる最高級ウイルトンカーペットなど、世界中に愛好家の多い高級絨毯。

実用性はもちろんのこと、華やかさを演出する装飾性にも非常に優れており、その質や模様などにより雰囲気も大きく変わります。

今回はペルシャ絨毯、ギャッペ・キリムについて、その魅力と、原産地では実際にどのようにお手入れされているのか、また原産地のお手入れ法も取り入れたクレアンでの絨毯クリーニング方法をご紹介します。

高級絨毯の王様、ペルシャ絨毯

ペルシャ絨毯は、実用性だけでなく美しさや芸術性、さらに、年月を重ね多く踏まれ使い込むほど糸が固くしまり、色合いに深みや美しさが増していくという耐久性を備えた、魔法の様な絨毯です。

芸術品としての価値も高く、コレクターも存在し、中でも状態の良いものは“アンティーク”として高値で取引きされます。

『孫の代まで』といわれる高級絨毯は、お気に入りをクリーニングし、何度も修繕して長く付き合う高級品です。

品質を左右する産地、工房

ひとくちにペルシャ絨毯といっても、産地によって大きく違ってきます。

産地の他にも、工房名・大きさの種類・織りの密度・状態やデザインなど様々な条件により品質や特徴が異なります。

クム、タブリーズ、ナイン、カシャーンなど有名な産地はいくつかあります。

その中で、中部高原地帯に位置し、サファビー王朝時代の芸術復興の中心地であるイスファハンでは、繊細で華麗なエスリムと呼ばれる唐草文様の、緻密な織りで芸術性の高い絨毯が作られており、絨毯愛好家の間でも高い人気があります。

敷物、タペストリー、テーブルクロスやイスラムの宗教的な祭礼用のマットなど、それぞれの種類によってペルシャ絨毯製作工房も生まれました。

タブリーズ、ナインなど地域によって模様が大きく変わるのも特徴で、国が認めた有名工房もあります。
有名工房のものは名前も絨毯に織られ高値で取引されています。

最高品質の素材

放牧が盛んで遊牧民も多いイラン地方では、素材はウールが中心です。
山岳地方の厳しい環境で育つ羊の毛はとても強く、耐久性に優れ色持ちもよいウールが使われます。

また、昔から絹の生産も盛んだったため、ウールと並んでシルクの絨毯も多く作られています。
日本で馴染みが深いのはシルクですが、やはりシルクはウールに比べると値段が高くなります。
また、ウールに比べると耐久性は劣り、繊細な素材の為、実用性よりも美術的価値の高いものが多いようです。

本来は、豊富にあった植物や昆虫などから採取した天然染料を使った草木染めにより、独特の鮮やかな色彩に染め上げていましたが、19世紀になると化学染料が広まり、現在では、草木染めの絨毯は少なくなりました。
手間のかかる草木染めですが、経年変化も楽しめる深い色合いが絨毯の魅力の一つです。

ギャッベ、キリムは実用品

ぜいたくな装飾品として発展したペルシャ絨毯。

一方、「ギャッベ」、「キリム」は生活の実用品として使われてきました。
最近ではギャッベ、キリムが、比較的安価なこともあり人気を集めています。

どちらもイランの遊牧民の手による織物で、富裕層のために織られたペルシャ絨毯よりも民衆的な織物です。
機械織りのカーペットは、目に詰まって細かい砂などは取れませんが、ギャッベやキリムは、砂が敷物の中に入っても叩くとすぐ取れるようになっています。
これが手織りの良さで、砂漠での生活の理にかなっています。

近年その評価がヨーロッパで高まり、とても人気のあるアイテムとなりました。

絨毯のルーツ、ギャッペ


ギャッベ(ギャベ)とは、イランの砂漠の周辺に暮らす遊牧民族が、草木で染めた手紡ぎの羊毛(ウール)で織る絨毯(ラグ)のことです。
ペルシャ絨毯が生まれる前、敷物は遊牧民族が羊から刈り取った毛で衣料用として毛糸を作り、その余った毛で作られていました。
ですからギャッベの語源はなんと「ゴミ」なんです。

手で毛糸に紡いでいくので、太いところ、細いところなど違いができ、その太さの違いが素朴な味を引き出します。
ウール100%なので暑い夏には湿度を吸って毛はしっとり、寒い冬には乾燥した冬には、ふんわりと暖かな肌触り。
遊牧民族の素朴な生活がデザインの元になっており、丈夫で汚れにくく、人間味にあふれた温かみが人気です。

生活道具としての万能織物、キリム


キリムとはウールの平織りのもので、絨毯に比べると薄く平たいものを指します。
敷物としてだけではなく、テント用や収納用の布など、生活道具として使われていたものも、すべてキリムです。

キリムは砂漠地帯のさらに奥、山岳地帯で使われる敷物として生まれました。
主にヤギの毛で編まれましたが、羊やラクダの毛から織られるキリムもあります。
裏表が同じ模様でリバーシブルになっているのも特徴です。

原産地のメンテナンス


高級絨毯として知られるペルシャ絨毯は、汚れた際に正しくメンテナンスしないと、せっかくの高級絨毯としての価値が下がってしまうだけではなく、見た目も悪くなってしまいます。

原産地であるペルシャ、現在のイラン地方で行われている洗い方は、まず、洗剤を使い表面を水洗いします。
このとき、フサもブラシで洗います。

全面を洗い終えたら、大量の水ですすぎ洗いをします。
「ビリ」というクワのようなイランの伝統工具で何度も水切りをし、脱水します。

その後、天日干しをします。

乾いた後、絨毯の毛先をミリ単位で削る作業を行います。
ペルシャ絨毯は、専門の職人がその様に表面を削ってお手入れをすることができます。

最後に、フサが短くなったり切れていたりしたら、フサを取り替えます。

大量の水と天然石鹸を使った、手作業クリーニング

クレアンでは、原産地と同様の方法も取り入れ、より手間と時間をかけ、高級絨毯に最適なクリーニングを行なっています。

天然石鹸、大量の水、熟練の職人で仕上がりが大きく変わる


まずは1点ずつ丁寧に検品した後、柔らかい電動ブラシでカーペット(ラグ)をブラッシングします。
その際、天然石けんを使って汚れを落とします。合成洗剤は一切使いません。

通常のカーペットクリーニングは、ほとんどが「シャンプー洗い」といって、大量の水で洗い流すことをしません。
カーペットクリーナーという機械からでるシャンプーで洗い吸い取るだけの作業です。

クレアンの絨毯(カーペット・ラグ)クリーニングの大きな特徴は、大量の水と石鹸で洗い流してしまうことです。
分厚い素材の芯まできれいになります。

また、絨毯(じゅうたん・カーペット・ラグ・マット)の編み方や繊維の特徴を熟知した、熟練の職人が作業に携わります。

ブラッシングは素材に合わせて最適な方法で


やわらかいブラシの電動ブラシは、生地を傷めないで汚れを取るため、カーペット(絨毯・ラグ・マット)の素材や種類により、操作方法はかなり違ってきます。
大型機械によるシャンプー洗いではできない技です。

房(ふさ)は手作業で丁寧に


絨緞の房(ふさ)は電動ブラシではうまく洗えません。
ふさは汚れが多いので、天然石けんを使用し、丁寧に手でブラッシングします。
こうして房(ふさ)を丁寧に洗うので、絨毯(じゅうたん・カーペット・ラグ・マット)のサイズの計測は、房(ふさ)の分まで含まれます。

「シャンプー洗い」の残滓までスッキリ


ブラッシングを始めると、カーペット(ラグ)の多くは大量の泡が出てきます。
これは、今回のクリーニングの洗剤ではなく、以前他のクリーニングで洗った洗剤が残っていたものです。
水で流し洗いをしない「シャンプー洗い」の残滓です。
残留洗剤はEM菌水で洗い流します。

大量の水を使って何度もすすぐ


洗い終わると再び大量の水が掛けられ、すすぎます。
石鹸泡と流れる水が透明になるまで、水が掛けられます。
汚れた水分とせっけんを残留させないためです。
これがクレアンの絨毯クリーニングの大切なところです。

また、イランなどと違って、日本は綺麗な水が豊富です。
自然豊かな地下水脈から湧き出た大量の水を使います。

イランの伝統工具を使った脱水


洗った後は、何度も水切りをして、EM菌水で洗い流します。
「ビリ」というクワのようなイラン製の水切り道具を使います。
歯の先がとがっている物ではないので、繊維を傷つけることなく、おもしろいほど水を切ります。
これがイラン伝統の脱水方法です。

絨毯の素材や状態に合わせた方法により、脱水作業を行います。

素材に合わせて乾かす


ゆっくり乾燥させるものと、早く乾燥させるもの。
素材によって乾燥方法は違ってきます。

移染(色移り)が心配されるカーペット(絨毯)は約3時間ほどで乾く熱風乾燥室で早く乾燥させます。
室内で陰干しする絨毯や、温室乾燥室で日光に当てて乾燥する絨毯もあります。外気には当てません。

丁寧な作業で美しく仕上げる


専用の機械で、隅々までブラッシングして毛足を立て、整えます。
同時にパイルから出た布ホコリを吸い取っていく優れものです。


ギャッベ・キリムなど平織りの比較的薄い生地の敷物は、アイロンがかけられ、形が整えられます。


その後、絨緞に巻き付いている布くずなどを取り、毛並みを整えたら完成です。
毛並みを整えていくことで絨毯のしなやかさ、ツヤが出てきます。

最後の大切な仕上げ工程です。

絨毯のシミや汚れは、ご相談ください


クレアンでは、ひどいシミや汚れなども職人の丁寧な手作業で出来る限りご対応するなど、ご相談を承っております。
お困りの際はぜひ一度ご相談ください。