エルメスゴム引きコートのシワ伸ばし補修

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補修工程

シワは鋭角に折れており、シワの無いところでも触った感じがゴワゴワで固くなってしまっています。

今回のクリーニングの検品タグには「全体的なシワ、防水テープの接着補修」と書かれています。

見たところ通常のシワではありません。このシワの寄り方は着用時についたシワとも思えません。比較的きれいな状態で入ってきましたので、すでにクリーニング、または洗濯されていたものだろうと想像できます。

完全防水のゴム引きコートに使われているマッキントッシュクロスは、コットンの生地に天然ゴムが圧着されて加工されています。クリーニング、洗濯時に、高熱の乾燥機に入れられて、かき回された結果、このような激しいシワができたのだろうと思われます。

硬くゴワゴワになってしまったのは、クロスの中のゴムが高熱で劣化していまい、そのまま固まってしまったのだと思われます。これを修復するのは容易ではありません。手アイロン技術の高い職人が手がけます。

このコートは、縫い目に貼ってある防水テープのはがれも激しく接着補修をしなければなりません。順番としてアイロンでのシワを伸ばしてから補修します。

こうしたひどいシワを伸ばすコツは、裏地から伸ばしていきます。生地の表裏を伸ばさないと十分な修正はできないのです。

防水テープの接着補修のために、テープがキレイに接着できるようにあらかじめ伸ばしておきます。

裏地のアイロンがひと通り終わると、とりわけシワのひどい袖周りのアイロンです。袖は立体的に縫製されていますので、「ウマ」というアイロン台を使って作業します。

アイロンも温度が上がるほどシワも伸びやすいのですが、ゴム引きコートは天然ゴムが生地にコーティングされていますので、アイロンの温度も高くは上げられません。

アイロンの温度はコットンでは、180度以上でアイロンを掛けるのですが、ここでは130度ぐらいの温度で、シワを伸ばすのですから、熟練したアイロン技術が必要となるのです。

次にもっとも手のかかる肩周りです。アイロン台の「ウマ」にコートを密着させます。

「ウマ」の丸くなっているところにアイロンを当てて立体的に仕上げていきます。カド、カドに合わせてアイロンも立体的に動いていきます。

あらかじめ、クロスの裏からアイロンをかけてシワを伸ばしていても、表地にはシワがまだ十分にあります。

左手で生地の端をつまみながら、引っ張るようにしてアイロンを掛けるのがポイントです。この方法は家庭でのアイロンのかけ方でも同じです。

熟練の職人でも難しかったらしく、長い時間をかけてようやく終了しました。

ゴワゴワ感をなくすために、特殊な柔軟剤でクリーニングし、アイロンでシワを伸ばすことによって、少ししなやかになりましたが、ゴム引きコートの天然ゴムの劣化が激しく、まだゴワゴワな感じが残っています。

裏地の縫い目に貼り付けてある防水テープはがれも、補修しました。

ワキの下からの防水テープも、接着しました。

マッキントッシュクロスのエルメスゴム引きコートの、シワ伸ばし修復と防水テープの接着補修の完成です。