マッキントッシュのコートはビジネスでもスーツスタイルのコートとして、またプライベートでもオシャレな羽織としても人気があります。
耐久性がよく、防水・防寒に優れていて、細身のシルエットがとてもエレガントです。
しかし、その特殊な生地ゆえに洗濯表示がすべて×になっていて、通常のクリーニング店では断られることがほとんど。
今回は、人気の防水コートであるゴム引きコートやトレンチコートと、そのお手入れ、そしてクレアンでの実際の水洗いクリーニングの様子をご紹介します!
ゴム引きコートの代名詞、MACKINTOSH LONDON(マッキントッシュ ロンドン)
MACKINTOSH(マッキントッシュ)は1823年に創業して以来、19世紀から変わらぬ伝統的な製法でゴム引きコートを作り続けているブランド。
現在はゴム引きコートだけでなく、トレンチコートやダッフルコートなど英国の伝統的なアウターウェアを現代に融合させたデザインとして提案しており、その人気は衰えることがありません。
英和辞書で「MACKINTOSH」と引くと、「ゴム引き防水コート」と書かれているほど、マッキントッシュは完全防水のゴム引きコートの代名詞となっています。
その英国を代表するアウターウェアブランド「マッキントッシュ」から誕生した「MACKINTOSH LONDON(マッキントッシュ ロンドン)」。
「マッキントッシュ」のDNAを受け継ぎながら、アウターウエアだけでなく日常のあらゆるシーンにフィットする本物志向なアイテムを創出しています。
英国の伝統性を基にした、シンプルで上質なファッション性の高いコレクションです。
日本でも人気が高いマッキントッシュのゴム引きのコートは、現在この「マッキントッシュ ロンドン」で3種類のみのモデル展開となっており、正統派の基本形DUNKELD(ダンケルド)、ダンケルドより10㎝着丈の短いDUNOON(ダヌーン)、フーデッドコートCHRYSTON(クリストン)があります。
生産枚数も限られていて、着ているだけで誇らしいマッキントッシュのゴム引きコート。
実際の着心地はというと、軽くてやや固めの生地感、風は通しませんが暖かいというわけでもない。
また肝心の雨の日には意外と使えない(!)など、あまり実用的ではないとも言われています。
独特のゴムのような匂いが気になるという方もいます。
なのにどうしてこれほどまでに長年人気があるのか?
ハリのあるマッキントッシュクロスゆえの洗練されたシルエット、昔ながらの職人によって作られている伝統感、飽きのこない品の良いシンプルなデザイン、そして手をかけ使い込むことによって味わいが増すこと、などが、おそらく愛用され続ける理由なのではないでしょうか。
雨がよく降る国イギリスの、防水に優れた様々なコート
イギリスは、ご存じの通り雨が突然降る国ですから、防水対策を施された様々なコートがあります。
マッキントッシュ以外にも、独自の生地を開発し長く愛されているブランドがあります。
英国が誇る代表的ブランド、BURBERRY(バーバリー)
“ギャバジン織り”で有名なBURBERRY(バーバリー)は、1856年に当時まだ21歳の若さだったトーマス・バーバリーによって創設されました。
もともと生地屋の見習い職人だったトーマス・バーバリーが1879年に考案したコットンギャバジンは、糸と糸の間の細かな隙間が通気性を約束する一方、目の詰んだ織地が雨風の浸透を防ぎ、当時のレインウェアに革命をもたらしました。
撥水性と通気性そして耐久性に優れているトレンチコートは、英国軍用のコートとして製作したのが始まりです。
軽くて柔らかい着心地で、どんなスタイルにも合わせやすいシンプルなデザインで定番のコートです。
英国王室御用達の証であるロイヤルワラントも冠しており、チャーチル元首相、小説家コナン・ドイル、オードリー・ヘップバーンなど名だたる著名人が愛用していたことも知られています。
トレンチコートの元祖、Aquascutum(アクアスキュータム)
Aquascutum(アクアスキュータム)は、1851年に仕立て職人のジョン・エマリーが、ロンドン西部の高級住宅地に紳士服店を創業したのがはじまりです。
創業時から、優れた職人技術と技術革新により業界の最前線をゆくブランドで、英国王室御用達ロイヤルワラントも獲得しています。
開業から二年後、エマリーは防水加工を施したウール生地を初めて作り出し、特許を取得します。
「アクアスキュータム」はラテン語で“水の盾”を意味を持ち、これがブランド名の由来となりました。
軽くて暖かく、シワになりにくい生地感、そして上品なシルエットが特徴的です。
洗うのは難しい“ゴム引き”という特殊生地
マッキントッシュのゴム引きコートは、二枚の生地の間に液化した天然ゴムをのばして圧着し、熱を加えて作られた有名な「マッキントッシュクロス」で縫製されています。
その防水性の高さは、雨が多いのにあまり傘をささないイギリス人に人気を呼びました。
「マッキントッシュクロス」を使ったコートは、エルメスやルイ・ヴィトン、グッチ等の有名ブランドからも販売されています。
完全防水服は、温度が高くなるとどうしても蒸れます。
そのため脇の下には通気孔がつけられています。
このように、マッキントッシュのゴム引きコートには生地以外にも様々な工夫がなされています。
しかし問題点もあります。
生地は完全防水ですが、生地と生地の間の縫い目にはどうしてもすきまが出来ます。そのために、縫い目に裏から防水テープを接着剤で張り会わせてあります。これが経年劣化で剥がれてくるのです。
特にワキの部分は汗をかくところで汗による酸化が激しく、また摩擦が大きいので、ボンドの劣化とともに剥がれてきます。
マッキントッシュのゴム引きコートのもう一つの問題は、スレです。
中にゴムが圧着されているせいか表面が硬く、ポケット、衿、ボタン周りがすれると、白化して白くなってきます。脇、ひじなどの摩擦が大きい部分も白くなりやすい部分です。
また、雨などで濡れた際についた折りジワが、アイロンがけは致命的な生地でかけられないため、そのままになってしまいます。
毎日のお手入れ方法
こだわりのブランドのトレンチコートを一生モノとして大切にするために、手間を惜しまずにお手入れしたいですね。
ここで日頃のお手入れ方法をご紹介します。
1. 着用後、クローゼットに入れる前に柔らかいブラシで全体をブラッシングし、表面のホコリを落とします。
2. 雨などで濡れた場合は、乾いた布で水分を拭き取り、風通しの良い乾燥した場所で陰干しします。
3. 襟や袖口の内側は、汗や皮脂汚れで白化する可能性があります。固く絞った濡れタオルで優しく拭くことで白化や黒ずみを防ぎましょう。
4. 肩がピッタリのハンガーにかけ、直射日光や蛍光灯の当たらない、湿気の少ない暗所での保管が長持ちのコツです。
5. 汗や皮脂汚れが生地に深く染みこむ前に除去することが、コートを長持ちさせます。
シーズン毎のクリーニングとメンテナンスをお奨めします。
専門技術を持つ高級クリーニング店で洗う
「家庭で洗ってはダメです」という洗濯表示
マッキントッシュのコートは、洗濯表示がすべて×になっているので、クリーニング店に持って行っても断られてしまいます。
ですが、この表示はあくまでも家庭洗濯表示法で、「家庭で洗ってはダメです」という意味で、ゴム引きコートの特質を熟知しているプロなら洗うことができます。
天然石鹸で手洗いブラッシング
検品後、エリ首の汗汚れや皮脂を除去します。
こびりついた汚れを除去しなければならないのに、このマッキントッシュクロスは、強くこすれません。
強くこすると繊維が白化してきます。
高い洗浄力のある石けんとして開発された石けんの泡で、柔らかいナイロンブラシで優しくブラシをかけると、汚れが良くとれます。
ゴム引きコートは、100%天然石鹸で洗います。
石けん溶剤にしばらく浸します。汚れを溶解させるためです。
その後、ほぼ全体をくまなくブラッシングして、汚れを石けん溶剤に溶かしていきます。
洗浄機でのゆすぎ作業
この後、ゴム引きコートはネットに入れられ、洗濯機に入れられます。
前洗いは終わっているので、ゆすぐ程度の刺激のない洗いです。
白化させない技術で手アイロン仕上げ
ゴム引きコート、マッキントッシュクロスは、主に業務用アイロンの蒸気の力でプレスしていきます。
プロのアイロンは、手元で蒸気の具合の調節ができます。
天然ゴムを高温で痛めないように微妙な操作をしながら、アイロンをかけていきます。
ゴム引きコートは硬いので、袖の折れ目は白化してきます。
この白化現象は経時劣化によって広がってきます。
色を深くするスプレーを掛けて目立たなくします。
出来上がりです。生地の白化も深色加工で直りました。
白化現象がひどくなった場合は元に戻すためには再染色して補正するということになります。
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劣化しやすいゴム引きコートの裏地防水テープ修理
高温多湿や汗が原因、裏地防水テープの剥れ
防水テープの劣化は、乾燥したヨーロッパでは比較的少なく、日本のような高温多湿の気候が接着剤の劣化を早め、汗が更に悪くするのです。ワキは特に汗をかくので、汗が酸化して接着剤の劣化が早くなります。
防水テープのはがれは、マッキントッシュブランドのゴム引きコートだけでなく、他のエルメスやルイ・ヴィトン、グッチ等のブランドのゴム引きコート全てに起こる現象です。
ドライクリーニングは厳禁!
ドライクリーニングすると1回ですべてがはがれてしまって修理もとても大変です。だからゴム引きコートのドライクリーニング処理は厳禁です。
状態に合わせて補修
はがれたテープの接着剤を除去してから、耐久性の高い新しい接着剤を使用します。
カタチを整え、元のように貼り付けていきます。
元の防水テープが劣化してダメになっている場合は、新しい接着テープを用意して貼り付けます。
防水テープの修理は、袖の裏まで含めてすべての部分を修理、修復してから、全体の仕上げへと続きます。
納期は、修理箇所にもよりますが、クリーニングを含めて約1ヶ月前後となります。