ビジネススーツでお仕事をしている皆さん、通勤バッグはどのようなものを使っていますか?
最近はシンプルなビジネスリュックを活用している方もよく見かけます。
両手が空いて身軽になりますし、ドラマで「スーツ+リュック」でスタイリッシュに通勤している役者さんを見るとスマートでかっこいいな!と感じます。
しかし、スーツにリュックを背負ってしまうとトラブルの原因になることもぜひ知っておいて下さいね。
リュックはいつ頃からあるの?
布や動物の皮を使った袋を両肩にまわして背中で持つ袋は、狩猟をする狩人のために考えられたものが始まりと言われています。
当時は狩りの道具や獲物などの重いものを片方の肩だけで持っていたことから、身体を傷めてしまったり機動力が弱いために長時間の移動に向いていなかったのでしょう。
時代が進んで、リュックは軍隊や登山で使われるようになりました。
日本語で「リュックサック」と呼ばれるものは、元々軍事目的で開発されたものを指していて、ドイツ語の「ルックザック」が訛ったものと言われています。
現在ではスポーツ時にも欠かせないバッグですし、ビジネスシーンでも利用されるようになったという流れですね。
スーツとリュックは本来相性が悪い
スーツは日常的に着用する衣類としては価格も高いですし、きちんとした印象を求められるシーンも多いでしょう。
クレアンのお客様のなかにはフルオーダー・セミオーダーでスーツを作られている方も少なくありません。
スーツはリュックを背負うことを想定して作られている衣類ではないため、コンディションの良い状態で長く着用するならば、リュックスタイルはおすすめできません。
その理由を見ていきましょう。
背負っている間中、摩擦が起こり続けます
スーツにはたくさんの知恵や伝統、テーラーの技術が込められています。
元々は男性が着用することを想定して作られた衣服ですので、男性の背中、胸、筋肉、骨格、佇まいなどを頼もしく、美しく魅せるためのノウハウが詰まった集大成と言っても過言ではありません。
スーツにリュックを合わせることは完全に想定外で、スーツでリュックを背負ってしまうと、スーツが持つ本来の豊かさや尊さが押しつぶされてしまいます。
リュックを背負うとスーツの肩と前身頃にはショルダーハーネスが当たり、背中にも常にリュックの背面が当たり続けます。リュックを背負っている間ずっと摩擦が起こり続けることになるのです。
スーツに摩擦が起こるとその部分だけ生地のダメージが進んで破れやすくなる、毛玉ができるなどのトラブルが必ず起こります。
この現象はオーダースーツだけではなく既製品でも同じです。
型崩れが起こる
スーツはビジネスシーンでの日常着ですが、その独特なシルエットも大切に考えて作られています。
例えば「くせ取り」。非常に丁寧に作られたフルオーダースーツではくせ取りによる処理が施されています。
私たちの身体はカーブを描いて湾曲していますが、スーツはもともと平面の布なので、そのまま身体に当ててしまうとスーツのほうが身体に引っ張られてしまい、たくさんのシワができることになります。
この現象をふせぐために、最初からスーツにシワを持たせて着用時に自然にフィットするようにする技がくせ取りです。
くせ取りの詳しい技法はここでは省略しますが、こんな見えない部分からスーツの形作りが始まっていることはぜひ頭の隅に入れておきましょう。
ジャケットの袖には「いせ込み」という技法も使われています。
いせ込みはもともと平面的な布を立体的に縫うことで、身体にあうような丸みを持たせるテクニックです。
ジャケットには「ラペル」と呼ばれている下襟があり、形や幅を変えることで印象もかなり変わります。着用シーンによってもラペルの形は変わります。
襟にハリを持たせるために見えない部分に接着芯が使われていることもあります。
スーツだからこそ大切にしたいこれらの技術やパーツも、リュックのショルダーは無残に押しつぶしてしまうでしょう。
スーツのジャケットには印象的なポケットもありますね。
ショルダーハーネスがポケットと重なって、フラップの形が崩れている様子も見かけることがあります。
ポケットにも種類があり、最もオーソドックスなのが「フラップポケット」です。
少し(かなり)話しがそれてしまいますが、フラップをポケットに入れるべきか出すべきかで迷ってしまうことも多いのではないでしょうか?
これには様々な考え方があり、私は20年以上前にポケットに入れておくように教わりました。
現在も人によっては「フラップの目的は雨、埃などがポケットに入らないようにするためなので、屋外では出しておく、室内ではポケットに入れておくのが正しい」と言う人もいます。
しかし日本はスーツ発祥の国でもありませんし、日本国内のマナーはローカルルールのようなものも多いものです。
日本人がマナーとしてやっていることでも、外資系企業などでは「どうしたの??」と言われてしまうかもしれません。
現在のビジネスシーンではフラップで雨をしのぐ必要はないですよね。デザインとして機能していることを考えると、フラップの扱いは「購入時の状態で着る」で大丈夫。
おそらく購入時にはほとんどのスーツのフラップがポケットの外に出ているのではないでしょうか。であれば、フラップは屋外でも室内でもポケットから出しておいてOKということになります。
ポケットの中に入れていないとマナー違反!なんてことはありませんので、ご安心下さい。
むしろもっと気をつけたいのが片方だけがポケットに入っているなど、左右がそろっていないことです。ポケットから物を出したときにおこりがちなのでご注意下さいね。
基本的にはジャケットのポケットには物を入れないようにした方が見た目もスマートですし型崩れを防ぐことができます。
パンツも傷みます
スーツにリュックを背負うと、リュック背面の下の部分が腰にも当たります。
この部分はジャケットも傷みますし、パンツ(スラックス)の腰の部分も傷めることになります。
ベルトによる摩擦でジャケットの裏地が傷んだり、最悪の場合、破れてしまうこともあります。
ビジネスシーンのリュックはどうすればいい?
スーツのことを第一に考えるならば、リュックを使わずに手提げかばんにするのが正解です。
しかし、スーツもファッションを楽しみたいですし、リュックで颯爽と出勤することでモチベーションが上がることもあるでしょう。
そういった場合は、スーツにリュックを合わせると必ずスーツにダメージを与えることを意識することが大切です。
簡単にできる対策としては、
・リュックを背負うだけでなく手に持つ時間も作る
・本当に大切にしたいスーツの日だけはリュックを使わない
・信頼できるクリーニング店に定期的にあずけてメンテナンスする
などでしょう。
「リュック通勤が当たり前になっている」という方は、ぜひこの機会にスーツのダメージをチェックしてみて下さい。
スーツにシワが増えてきたり、スラックスの折り目にシャープさがなくなってきた、全体的にくたびれていると感じているなら、ぜひクレアンにお任せください。
クレアンではスーツも水洗いが可能ですので、しみ込んでしまった汚れや臭いの原因をスッキリと落とします。
仕上げにスーツの製法や構造を熟知している職人の手仕上げでアイロンを当てますので、スーツにハリがよみがえりますよ。