アルチザンがつくり出すトラディショナルで独創的なアイテムの数々
誕生の地、フランスに根ざした生産体制
エルメスは1837年に誕生したフランスの企業です。その伝統的なコンセプトを保ちつつ、時代に合わせた独創的なデザインを取り入れ続ける姿勢は、世界でも最高級ブランドの一つでしょう。
エルメスがつくる製品は多岐にわたり、革製品からジュエリー、時計、ウェア、バッグやスカーフなどの小物まで、生活を彩る多くのものを生産しています。そして、エルメスの大きな特徴は、アルチザン(フランス語で職人のこと)がその多くのものづくりに関わっていること。多くのブランドがほぼ外注によってアイテムを製造しているのに対して、エルメスでは実に61%を社内アトリエや独占契約を締結しているアトリエで生産しています。
また、その拠点の多くは誕生の地であるフランスに集中しています。フランスの拠点は43箇所に対して海外には12箇所と圧倒的です。エルメスは誕生の地であるフランス国内に多くの雇用を創出すると同時に、伝統的な技法を持つアルチザンの後継者を育成することで、製品のクオリティーを保ち、企業の持続可能性を高めているのです。
エルメスが展開するメチエ
エルメスは、製品部門を「メチエ」と言います。これはフランス語で「専門の分野」などの意味となっています。エルメスのメチエは、皮革・馬具製品/シルクとテキスタイル/メンズおよびレディスプレタポルテ/ジュエリー/シューズ/ベルト/手袋/ハット/フレグランス/ウォッチ/家具/テーブルウェア/家具用ファブリック/壁紙/petit h(プティ アッシュ)/ビューティと、16にも渡っています。
エルメスでは、これらのメチエがそれぞれにテーマを設定するのではなく、毎年統一されたテーマを決めて、それぞれのメチエが展開していく手法をとっています。エルメスという大きなコンセプトをもとに、テーマを自由にアレンジして新しいアイテムを創造していくのです。それこそがトラディショナルでありながら、斬新な独創性を併せ持つエルメスのアイテムが誕生する秘密と言えるでしょう。
エルメスの歴史と成功は、同族経営にあった
1837年に創業者であるティエリー・エルメスが馬具工房として始めたのがエルメスです。彼の作る馬具は、洗練されており、ナポレオン3世をはじめ、多くの貴族が愛用していたと言われています。長い歴史を経て、現在では世界でも稀有なハイブランドへと成長したエルメスですが、その成功には同族経営を貫いたことにあったと言われています。世界的なブランドでは、吸収合併も珍しくありませんが、エルメスはシャネルと同様に同族経営によって成功したブランドなのです。そのなかでも、大きな変換点を迎えた出来事をご紹介しましょう、
先見の明でエルメスを発展させたエミール・エルメス
エルメスを馬具メーカーから多彩な製品をつくる企業へと発展させたのが、3代目である創業者の孫であるエミール・エルメスです。
世界の情勢は、工業技術の発展が加速する一方で、世界大戦も勃発するなど混乱も生じた時代。生活様式も大きく変化をしていきました。そこで、エミールは馬具だけではなく、多くの皮革製品を製作し始めます。エルメス最初のバッグも彼の時代につくられました。そして、そのバッグには、当時画期的であった「ジッパー」を採用し話題となりました。現在でもそのバッグは「ボリード」として販売されています。
エミールは革製品だけではなく、1925年にはメンズブルゾンを、1928年には時計と、次々に製品を送り出していきます。エルメスの代表的なアイテム「カレ」もエミールの時代である1937年に誕生しました。
ケリーとバーキン、代表作と共に近代的な発展を遂げる
1951年に4代目となったのは、エミールの娘婿であるロベール・デュマです。そして、CEOとなる以前に彼がデザインしたあるバッグがエルメスの知名度を大きく引き上げます。それが「ケリー」です。
1956年、モナコ大公と婚約を発表した有名女優グレース・ケリーがロベール・デュマのデザインしたバッグを持った報道写真が公開され、そのバッグが空前の人気となったのです。エルメスでは、モナコ公妃となったグレース・ケリーに敬意を込めてバッグに「ケリー」と命名しました。
また、代表的なバッグはロベール・デュマの息子で5代目となったジャン=ルイ・デュマの代でも奇跡のような出会いによって誕生しています。1984年、ジャン=ルイ・デュマが偶然飛行機で乗り合わせたのが、ヨーロッパでモデル、女優として有名なジェーン・バーキンでした。意気投合した彼女にジャンがプレゼントしたバッグこそ「バーキン」だったのです。
出典:https://www.harpersbazaar.com/jp/celebrity/celebrity-buzz/g155468/cja-jane-birkin-smile-quotes-171214-hns/
このエルメスの代表的なバッグの誕生を機に、ジャン=ルイ・デュマはエルメスのイメージを一新させ、ファッション界に旋風を巻き起こします。若い購買層も取り込みながら、世界各国に店舗を展開して、現在の地位を築いていったのです。
ただ、一貫して貫いているのは、家内工業的な同族経営です。アルチザンの精神を一族で受け継ぎながら、フランスを拠点とするスタイルこそ、エルメスの伝統なのです。
エルメスの代表的なアイテム
手作業で製作されるカレ
エルメスでは、スカーフのことを「カレ」と呼びます。これはフランス語で「正方形」という意味で、エルメスだけの呼び方です。カレの大きな特徴は、その図柄にあります。非常に洗練された美しいデザインは、手作業で染め付け作業をおこないます。また、多くのデザインバリエーションがあり、それらひとつひとつにストーリーがあるのです。
もちろん、素材にもこだわりがあります。カレに使用されているシルクは、身につけてみるとわかりますが、驚くほど優しい肌触り。縁かがりも手作業によるものなので、立体的で美しく仕上がっています。
革製品の伝統的な手法で製作されるバッグ
機能性とデザイン性を両立したバッグ
出典:https://www.purseblog.com/guides/how-much-popular-hermes-bags-will-cost-you-on-the-resale-market/
エルメスは、馬具製品を製作していたブランドですから、革製品の製作には定評があります。そして、そのなかでも最も有名なアイテムがバッグです。
ご紹介したような「ケリー」や「バーキン」などの超有名バッグはもちろんですが、「ガーデンパーティー」や「ピコタン」、「リンディ」などのバッグも、非常にクオリティーが高いのが特徴です。
代表的なバッグである、バーキンを例に取ってみると、デザインももちろん良いのですが、特に機能性が優れていて容量が多いことが知られています。これは、ジェーン・バーキンが持つバッグから物が溢れていたことから発想を得たと言われています。同じバーキンでも5サイズあり、「バーキン25」が最小サイズで、横25センチx高さ20センチxマチ13センチです。最大サイズは「バーキン45」で、横45センチx高さ28センチxマチ19センチとなります。 バーキン25など比較的小さいものは、化粧ポーチや財布などが楽に入り、買い物や食事など、ちょっとしたお出かけにちょうどよいサイズです。一方で大きなサイズのものは、着替えなどかさばるものも入れられますので、旅行にも使用できます。バーキン45は、男性でも旅行に使用している方が多いです。
シンプルでエレガントなデザインのエルメスのバッグは、デザイン性と機能性、その2つが両立しているのが大きな特徴なのです。
エルメスの革製品へのこだわりと種類
エルメスは、ご紹介したように馬具製造から誕生したブランドです。そのため、馬具に使用する革には多大なるこだわりを持っています。本社には革を管理する部門があり、加工前の革は最適な環境で保管されています。
もちろん、仕入れる革についても大きなこだわりがあります。革は鞣し方によって品質が左右されますから、世界的にも有名なフランスのデュプイ社などのタンナー(革を鞣す企業)から仕入れを行っています。牛革の場合、使用する部位によっても品質が異なるそうで、エルメスの場合には、背中部分の「バット」と言われる高品質の部分のみ使用していると言われています。
エルメスの牛革には、型押しの種類などからさまざまな種類があります。代表的なものをご紹介しておきましょう。
・トリヨンクレマンス
ほどよい皮目の雄牛の革です。革自体に張りがあって、キズなどには強い素材だと言われていますが、水濡れが非常に苦手です。もし、雨に濡れるなどしたらすぐに拭き取って乾かしましょう。
・トゴ
「ヴォー・クリスペ・トゴ」という素材です。雄の子牛の革で、1977年から使用されています。深めの皮目をしていて、柔軟性があるので、キズや擦れにも強いのが特徴です。
・ヴォーエプソン
キメが細かい型押しが施されているのが特徴です。2003年から素材のラインナップに登場しています。比較的硬めであることが特徴で、型崩れしにくく、軽量という特徴もあります。
このように、デザイン性と機能性、そしてこだわりの素材によって生み出されたエルメスの革製品は、耐久性にも優れ、長きに渡って使用し続けられるのです。
エルメス製品を長く使い続けるために
エルメスの製品の多くは、フランスの工房などでアルチザンが丁寧につくっています。そのため、価格は高くなりますが、長い間使用できるという大きなメリットがあります。良いものを身につけるのは、そのブランドの歴史やテーマを感じることでもあります。そして、使い勝手がよく、デザインも優れているため、自然と長く使用したくなるのです。しかし、長く使用し続けるためには、メンテナンスが非常に重要になってきます。
クレアンでは、ハイブランドの製品も高い技術によって満足度が高いメンテナンスを実施しています。素材やデザインなどに合わせたメンテナンス方法を選択し、修理などもおこなっています。
革製品のメンテナンスについて
革製品では、多くの場合クリーニング(クレンジング)のみではきれいにすることが難しくなっています。その場合には、再染色をおこなっうことになります。
再染色をおこなっている業者は多くあると思いますが、実はこの作業には高い技術が必要なのです。ベースの色を作るところから、かなりのノウハウがあり、不自然でない吹付けや塗り込みの技術が必要となります。例えるならば、美術品の修復のような作業と言っても良いでしょう。エルメスなどのバッグは、美術品とも言われるのですから、それも当然かも知れません。
そのほかにも、「カビが生えてしまった」「飲み物をこぼしてしまった」などの、さまざまなトラブルにも対応しています。
シルク製品のメンテナンスについて
エルメスのカレは上質のシルクが使用されています。また、染色もデリケートな工程で仕上げています。エルメス独特の素材の風合いを損なわずに、また、色落ちをさせずにメンテナンスすることは非常に難しいので、ぜひ、ご自分でやることは避けてください。プロであるクリーニング業者でも、シルクの洗浄に慣れていないところは苦労してしまうほど難しいのです。
一方で、ハイブランドのクリーニングを多く実施しているクレアンでは、画期的な水洗いクリーニングである、マイクロバブルウォッシュを採用しています。これは、超微粒な泡を発生させて、繊維の奥の汚れまで取ることができるものです。本来ならばシルクなどの素材は水洗いだと繊維が痛みますが、この洗浄方法では泡が繊維に入り込むため、繊維と水の接触は最低限に抑えられているのです。ドライクリーニングでは除去しきれなかった汚れも、マイクロバブルウォッシュで洗浄すれば、スッキリと軽い仕上がりになります。
長く使用するからこそトラブルも
前述のように、ハイブランドのものは長く使えるものです。だからこそ、メンテナンスが必要なのですが、逆に言えば長く使用しているからこそ汚れなどのトラブルも発生しがちです。そのような事態にうまく備えておくために、信頼できるクリーニング・修理業者を探しておくことは、非常に重要なことです。ご不明な点がありましたら、どのようなことでも、ご相談ください。